オーストラリアの大学で頭蓋仙骨療法を学び始めてから約10年が経つが、いまだに試行錯誤の日々を送っている。
この頭蓋仙骨療法は大きく分けると2種類に分類される。
一つは文字通り「頭蓋骨」と「仙骨」の物理的な動きにアプローチし、その周辺組織とそれに関連する体全体の機能的な改善を目的とした施術法で「バイオメカニカル」と呼ぶ。
もう一つは、物理的なカラダという認識から離れ、呼吸とも心臓の鼓動とも全く違う「人間が持つ固有の波長」、物理学的な世界とは異なる「何か」にアクセスをしていく手技である。オステオパシーではこの「波長」のことを「第一次呼吸」と呼び、それに対してのアプローチを「バイオダイナミック」という。
読谷ホリスティックスでは、その人の状況により「バイオメカニカル」なのか「バイオダイナミック」なのか、または両方なのかを使い分ける。
そして、私がいまだに試行錯誤しているのが「バイオダイナミック」な頭蓋仙骨療法である。
この「バイオダイナミック」な施術において最も大切なことは、施術者が「非介入」のアプローチをしなければならないということである。
非介入とは「何もしてはいけない」ということだが、文字通り何もしないと何も起こらない。
バイオダイナミックにおける「非介入」とは何を意味するかというと、まずは前述の「第一次呼吸」をしっかりと認識すること、そしてその波長に「寄り添う」ことである。
これは現時点で私が言語化できる最もシンプルな表現ではあるが、実際のところ言語化できない部分も多々ある。
ここ3年間ほど、手を当てるだけの文字通り「何もしないアプローチ」と波長に寄り添う「非介入のアプローチ」を実験的に行なってきたが、その明らかな結果の違いに施術している本人が一番驚いている。
側から見ると、前者と後者の違いは全く分からない。
しかしながら、この「非介入」かつ「承認欲求」が存在しない、ただひたすら「寄り添い」「待つ」施術の持つ効果は、施術後のクライアントの言葉にならない言葉によって、その存在に対しはっきりと確信を持つことができる。
そして、この言葉にならない体験をするということは、自分が持つ「Spontaneous Healing: 自発的治癒」のドアを開くということと同義である。
これからの医学は、現代医学に代表される「バイオメカニカル」と、ヒトに内在する「バイオダイナミック」の両輪がしっかりとバランスを保つことによって、人間という種の本当の力を発揮するためのアートとして昇華するべきだと考える。
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